現在は小売店向けのコンサルタントを名乗っている私だが、成り行き&一般的にわかりやすいという理由で名乗っているだけで、実際は単に
「お店や買い物が好きな一般人」
であると自覚している。コンサルタントではなく、なぜ私が「お店」という場所が好きなのかを考えてみた。
1.自宅とは違う、空間であること
欲しいものはネットショップでも買える。しかし「お店」という空間は、そこに行かなければ体感できない。
あなたも、コーヒーは自宅でも飲めるのに、スタバに行くのは、コーヒーの味はもちろん、その場所で過ごすのが心地良いからではないだろうか。
お店も、自宅のPCで「ほしい服を選ぶ」ことも出来るが、そのお店でしか味わえない【体感】がある(体験とはまた違う)。
ケーキ屋さんや和菓子屋さんであれば、奥で作っている匂いが漂ってくるとか、洋服屋さんであれば自分の家には絶対不釣り合いなゴージャスな鏡や什器の中でいろんな服を見て回れるというもの。
喋らなくても、この店員さん、かわいいな、いいかんじだな、と感じるのも【体感】。それを感じたくて、私は実店舗に行く。
2.素敵な店員さんとの出会いがある
恐らくほとんどの人がそうであるように、私も店員さんに接客されるのが苦手だった。
接客=売り込み、のイメージ
どうせ、ノルマがあって、似合わないものも似合うとか言って、無理矢理買わせるんでしょう?そう思っていた。
特にコミュ障で、自分にはおしゃれをする資格などない、と思い込んでいたネガティブな20代前半はその思いが強かったと思う。
ただ、私が20代の時にどっぷりのめり込んだヴィヴィアンウエストウッドにいた「Mちゃん」との出会いが、それを変えた。
Mちゃんとは、彼女が20歳の時、インターン的な立場で専門学校生できていたときからの付き合い。33歳くらいまで、彼女が店長になって結婚するまで公私ともに仲良くしていた(私の結婚式にも来てもらったほどの仲)。
最初はたどたどしく、言われたことや覚えたこと(商品の特徴など)を言っている彼女がかわいいなと思って、接客されていた。
何回か通ううちに、私の普段の服装や持ちものをみて「これが合う、これが合わない」など言ってくれるようになった。
そのうち、購入したものは全部覚えていて、「この前買っていただいたアレとコレ、合いますよ」など言ってくれるようになった。もちろん購入履歴はPC等で見れるのだが、それを見なくても私が買ったものはほとんど覚えてくれているのが安心感と信頼感につながった。
彼女は結婚して退職、他県に行ってしまい、悲しいくらい疎遠になってしまったが(私が携帯のキャリアを変えてメールが届かなくなったというのもある)、私は接客されることを楽しめるようになった。
Mちゃんほどの店員にはまだ出会っていないが、親身になってくれる人も多くて、こちらがどれだけオープンになっているかの違いだろうなあ、と感じている。
3.自分自身がお店をやりたかった
2000年代前半、雑貨&カフェブームがあった。
雑貨のデザイン職を目指して就職活動をしていた私だが、当時就職氷河期で、この職種の募集はほとんどなかった。(町工場の事務でさえ、求人を出せば100人くらい応募があった時代)
そのブームに乗り、いろいろな専門学校が「雑貨ナントカ講座」を開いていた。デザイナーになれなかったので、売る側にはなれるのではないか、と思い、夜間、ヒューマンアカデミーの「雑貨トータルプロデュース講座」に通った。(当時、金融のOLだったので、お金と時間はあった)
自分の目利きで仕入れた商品を、自分が作った空間で、お客様が喜んで買ってくれてお給料が入るなんて、素敵!
そう思って受講した講座だった。1年間で50万くらいお金がかかったと思うが、経営の「け」の字も知らない私に、経営の基本から、仕入れ、コーディネートなど、教えてもらえるなんて、すごい!と、何も厭わなかった。
しかし、その思いはすぐに破綻する。
かなり前半の授業で、自分のやりたいお店にはお金がどれくらい要るのか、というのを坪単価や仕入れ、内装費、外装費などからシミュレーションする授業で、1000万くらいかかるということが分かった。
今ではその1/10くらいでも開業できる方法はいくらでも思いつく。
だが、その授業では、
「坪単価は●万円、その際の仕入れは●万円、外装費は、、、」など“一般的”な数字を当てはめて計算するだけだったので、ある種、資本を持っている企業が開業する数字になってしまったというわけである。
しかしすっかり「1000万」という数字にひるんだ私は、雑貨店の開業も「いつか、の夢」にして、諦めてしまった。
(その数年後、思いがけず雑貨店の立ち上げに関わり、さらにその数年後自分も念願の京町家で雑貨店兼ラッピング店を開業することになりますが、この時点では“諦めた”と思っていました)
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という思いがあり、「店」「店員さん」が好きで、それが感じられるのが実店舗の魅力。
ネットショップであっても、ZOOMや、チャット、電話、メールなど心温まる接客をしている方も多いと聞きますが、やはり
「対面で会う、実物を見て選ぶ」
という楽しさは、ただの買い物好きな一般人としては、外せない要素。
だから、今、自粛や時短営業されている飲食店はもちろん、時短営業の対象外だけど、おおっぴらに人を集めることが憚られるお店の方々も、実店舗は閉めないでほしいなと思っています。